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桜の妖精との、数日の思い出
written by チョンマー
  • 学校/学園
  • 切ない
  • ファンタジー
  • 人外 / モンスター
  • 妖精
  • 青春
公開日2025年04月13日 22:00 更新日2025年04月13日 22:00
文字数
2318文字(約 7分44秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
桜の妖精
視聴者役柄
男子高校生
場所
学校(中庭)
あらすじ
春、桜が舞う季節。そして、新生活が始まる季節。
新しい学校に新しいクラス。そこにうまく馴染めてない僕は、昼休みになると、こうして桜の木のそばで総菜パンを食べる。

そんなある日、とつぜん僕に声がかかって……。
本編
ねえ、その焼きそばパン、おいしい?

わぁ、急に飛び跳ねて、びっくりした……って、そっちのセリフだよね、ごめん。


急にどこからって、私は、ずっとここにいたよ。

うん、ずっと。正確には、君がもたれかかっているとこに、ずっと。


何を言ってるか分からないって顔だよね。そりゃそうだ。

私は、えーと……桜の、なんて言ったらいいのかな?
神様? 化身? 妖精?
どれが一番近いんだろ……? 

あっ、でも、幽霊ではないので! そこは勘違いしないで!
別に、人に危害を加える力なんてないし、そもそも、大した力なんて持ってないし。
多分、妖精でいいと思うな。だって、その方が可愛いでしょ?

そんな桜の妖精の私は、桜の花が咲いている間だけ、こうして実体化することができるの。

そう、実体化。私の本体はこの桜の木なんだけど、分身、って言えばいいかな。そうすることで、こうして人の前に姿を見せることができるの。

けれど、実体化したところでさ、わざわざ学校のこの場所まで来てくれる人なんていないし、ずっと一人でここから見える窓の中の、高校生たちの様子を見ていたんだよね。


でも、ここ数日は、君がやってきてくれるようになって、せっかくだから、お話ししたいなって。人と話すの、ほんと何十年ぶりってぐらいだったから。


けれど、ごめんね。声をかけるにしても、もうちょっと、あったよね。
驚かせてしまって、ごめんなさい。

気にしてない? よかった。

それで、改めて、お願いなんだけど。
私と話をしてくれない?

昼休みの間なら? 嬉しい! ありがとう。
今日は、もう時間もあまりないから、また明日、ここに来てね。
私待ってるから。



おっ、さっそく来てくれた。
今日も焼きそばパンなんだ。好きなんだね。


お腹がいっぱいになればどうでもいい?
それは良くないぞ。せっかくの食べ盛りなんだから、もっと栄養バランスを考えた食事を摂りなさい。


説教クサい? そりゃ、こう見えて、君よりもずーっと年上なんだから。この見た目は仮の姿。


なんで、そんな姿で現れたのかって?
君たちと同じ齢の女の子の姿だったら、少しは親しみやすいかなって、そう思って。
顔とかも、できるだけ今どきの可愛い? に近づけたんだけど……。

どう、かな? もっと別の姿の方がいい?


この姿でいい? よかった。

ねえ、顔、赤くない?

あれー、もしかして、私、そんなに可愛かった?
ふふっ、研究の成果が出てよかった。

ねえ、もっと顔見てよ。
君のために、君と話したいから、この顔にしたんだよ。


顔がどんどん赤くなっていく。
女性慣れしてないんだね。

ふふっ、かわいいな。

ごめん、からかって悪かったよ。
人と、こうして軽口を言うのも、久しぶりで、ついはしゃいじゃったの。許して、ねっ?



ねえ、君はなんで、私が声をかける前からここに来てくれたの?


クラスにうまく馴染めない……。
なるほど、俗にいう、ぼっちってやつだね。


あっ、ごめん。その、傷つけるつもりはなかったんだけど……。


よし、それなら、私が協力してあげよう!

どうやってって、それはね。
私が、話しかけるためのきっかけを用意してあげる。


私、ここから教室を眺めていたって言ったでしょ?
ここからだと、君のいるクラスも見えるんだよ。

私、今日まで君の教室を結構覗いていたからさ、君も含め、君の教室にいる人たちのこと、何となくわかるんだよね。

例えば、君の斜め後ろに座っている子。
あの人ね、授業中、こっそり漫画を読んでるよ。最近はやりのやつじゃないかな。
漫画の話をしてあげると、乗っかってくれるかも?

あと、君の席の二つ右隣に座っている子。
あの子も、君と同じくパンを食べてるみたい。けど、君と違っていろんなパンを食べてるのを見るかな。
食べ物の話から、もしかしたら話題を広げられるかも?


どう? 参考になった?
今度、話しかけてごらんよ。

大丈夫、私が応援してるから。
言ったでしょ? 私、教室を見てるって。
うまくいくように遠くから応援してるから、頑張れ!



ふふっ、いらっしゃい。
そして、おめでとう。

友達、できたみたいでよかったね。
うん、見てたよ。一生懸命に声をかけてた君のこと。


後ろの子とは、漫画の趣味が合いそうでよかったし、右の子とは、こんどおいしいパン屋を紹介してくれるみたいじゃない?

私も、君に友達ができてうれしいよ。

お礼? そんなのいいって。
私にとっては、君とこうして一緒に話しているだけで、十分お礼をもらっているようなものだし。

そんなにお礼がしたいって言うなら、今度の休みに、その新しくできた友達との思い出話を聞かせてよ。

うん、楽しみにしてるから。



こん、にちは。
休み、どうだった?


私のことは、気に、しないで。
聞かせて。君の、思い出話。


うん、うん。
すっごく、たのしそう、だね。聞いてるだけで、楽しい気持ちが、伝わって、きた。


はは、もう、そろそろ、かもしれない。


あのね、私がこうして、実体化できるのには、期限があるの。

桜は、花が見所。花が咲いた時に、人が大きな関心を向けてくれて……葉っぱになったら、忘れちゃう。

私も、そういう存在なの。悪魔とか、妖怪とかも、そう。
人が意識するから、認知するから、存在できるの。


しかたないよ。
花の咲いていない、桜に、人は興味なんて、湧かないでしょ?


ありがとう、かなしんでくれて。
やっぱり、君に会えて、本当によかった。


大丈夫。もう、君は一人じゃ、ないでしょ?

それに、私は死ぬわけじゃない。
実体化できなくなる、だけで、桜の木は、ずっと、ここにあるから。

また、桜の花が、咲くころには、きっと。

覚えていて、くれるんだ? 嬉しい。


あっ、そろそろ……残っている花びらも、落ちてしまいそうだね。


私、君のこと、ずっと見ているから。応援しているから。
がんばれ、高校生!

また、桜の咲くころに、ね!
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
桜の妖精との、数日の思い出
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
チョンマー
ライター情報
pixivでフリー台本を書いています。
甘々な話も、ちょっとエモいお話も、どっちも好きで書いています。
元々小説畑の人間なので、どこか物語染みてるところがあるかも……。
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