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猫みたいなダウナー少女が、家に上がり込む話
written by 夢野 二見
  • からかい
  • 甘々
  • 色仕掛け
  • 少女
公開日2026年05月13日 21:20 更新日2026年05月14日 10:13
文字数
1815文字(約 6分3秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
少女
視聴者役柄
お兄さん
場所
部屋
あらすじ
雨上がりの夜、ゲーセンで出会った猫みたいな女の子を、貴方(聞き手)は終電までの約束で部屋に上げることになります。
普通の部屋、本棚、冷えた空気、一人がけのソファ。彼女は遠慮するようでいて、少しずつ貴方の空間に入り込み、当たり前のように貴方の足の上へ座り込みます。

「お兄さんは、椅子」
そう言って勝手に契約を結んだ彼女は、ゲーセンで取ってもらったぬいぐるみを、自分の代わりとして部屋に預けようとします。

帰る場所の温度を知らない少女が、終電までのわずかな時間だけ、貴方の部屋と体温を自分の居場所にするお話しです。
本編
……お邪魔します。

ふふ。 案外、礼儀正しいでしょ、私。

……ねえ、お兄さん。 言っとくけど、ちゃんと終電までには帰るから。 安心して。 約束したのは私だし。
……ふふ。 ちょっとほっとしたでしょ、今。 顔に書いてあった。

……うわ、ほんとに普通の部屋。
もっと散らかってるか、もっと無機質か、どっちかかなって思ってた。

……あ、本、結構あるね。 読むんだ。
……読まないで積んでるだけ? ふふ。 一緒だ、私も。 表紙だけ眺めて、満足する人。

……ねえ、お兄さん。 ちょっと、寒くない?
エアコン、つけてないんだ。 ……節電? 真面目だね。

……いいよ、つけなくて。 我慢する。

我慢っていうか……これ、悪くないかも。 部屋の温度が、外と地続きなの。 ……お兄さんの部屋、ゲーセンの続きみたい。
電車の中だけ、暑かったね。 みんなコート着たまま乗るからかな。

……家、ってさ。 普通、そうじゃないんだけどね。 帰ってきた瞬間、ふぁって、空気が変わる場所のはずなんだけど。

……あ。 ごめん。 重い話するつもりなかった。

ふふ。
床、座っていい?

……うん、ここで。
お兄さんも、座って。 そっちのソファ、 ……一人がけなんだ。 二人がけ買わなかったの、ずるい。 一人で座る前提なの、ずるい。

……ね、こっちおいで。 床。 床がいい。
……お兄さんの足、伸ばして。 あぐらじゃなくて。 ……うん、そう。

……んしょ。
ふふ。 失礼します。

……ねえ。 怒らないでね。 私、お兄さんの足の上、座ってる。 さっきからずっと。 気づいてた?
……うん、気づいてたんだ。 なんで何も言わなかったの。
……ふぅん。 お兄さん、本当に変な人。

普通、会ったばっかの女の子に、ぬいぐるみ取ってあげて、 ゲーセン付き合って、 部屋に上げて、 足の上に座らせて、 文句、言わない?

……ふふ。 それ、責任転嫁。 私が乗ったから乗っただけ、って。
……でも、いいよ。 私の責任で、座ってる。 これは、私が決めて、私が乗ってる。 お兄さんは、椅子。

……椅子は喋らないし、文句も言わない。 私が降りるまで、ただ、そこにいる。
そういう契約。 私が決めた。
……いい?

……ふふ。 返事ないってことは、了承。 椅子は、返事しないから。

……ね、椅子。
雨、止んだのかな。 さっきから音、聞こえないし。

……でも、止んでても、いいや。 もう、駅まで歩く理由、ないし。 ここに、いるし。

ふふ。 ここ、お兄さんの部屋だけど。 私が今、いるから。 ……ちょっとだけ、私の場所でもある。
これから、何時間かは。

……ねえ、椅子。 ……あ、お兄さん、か。

椅子は喋らないけど、お兄さんは、聞いてるでしょ。 だから、言うね。
私、決めたことあるんだ。
このぬいぐるみさ。 さっきお兄さんが取ってくれたやつ。
……これ、お兄さんに、預けとく。

……だって、私が持って帰っても、誰も褒めてくれないから。 「かわいいねー」とか「よかったねー」とか、 言ってくれる人、いないんだもん。
お兄さんが持ってた方が、 ……このぬいぐるみも、寂しくないと思うんだ。

……ふふ。 ぬいぐるみの心配してる、私。 ばかみたい。
ほんとはね。 これ、私の代わり。 私が来れない日、お兄さんの部屋で、留守番してる。 ……変な番犬。
ね。 だから、部屋にいる時、たまに見て。 「あ、あの猫みたいな子、いたな」って、 ……ちょっとだけでいいから、思い出して。

……ふふ。 重い? 重いね。 引いた?
……ふぅん。 引かないんだ、お兄さんは。

……だから、悪い人じゃないって、思ったんだ。 駅で、ちゃんと「降りる?」って聞いてくれた人だから。
「降りるよね」じゃなくて、「降りる?」。 帰る選択肢、私に渡してくれた。
そういう人、ぬいぐるみ預けても、たぶん、ちゃんと一緒にいてくれるでしょ。

……あ。
時計、見ないでって、自分で言ったのに。 矛盾してる、私。

……ぎりぎり、あるね。 終電。

……立ちたくない。
椅子、降りたくない。
降りたら、契約、終わっちゃうから。

……ふふ。 ばかみたい。

……うん、行く。 ちゃんと帰る。 約束、したから。
……ううん、送らなくていい。 駅、すぐそこだし。 雨、止んだみたいだし。
それに、送られたら、もう一回、玄関で別れるの、面倒くさい。 ここで、終わらせた方が、楽。

……ふふ。 そういう、ずるいとこ、私。

……ぬいぐるみ、よろしくね。 留守番、ちゃんとさせてあげて。
……次に来る時は、 ……あ、 「次」って、勝手に言った。 ごめん。

……でも、 雨、また降ったら。 前みたいに、ゲーセン、いるかも。
その時は、また、椅子になってよ。 上手だったから、お兄さん。

……椅子の素質、ある。

ふふ。
……じゃあね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
猫みたいなダウナー少女が、家に上がり込む話
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
夢野 二見
ライター情報
デカダンスでメランコリーなお話しが好きです。

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