- からかい
- 嫉妬
- 純愛
- 拘束
- 後輩
- インモラル
- 色仕掛け
公開日2026年05月09日 21:11
更新日2026年05月09日 21:11
文字数
1535文字(約 5分7秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
後輩
視聴者役柄
先輩
場所
部屋
あらすじ
貴方(聞き手)の部屋を訪れた後輩は、前回来た時にはなかった一冊の本に気づきます。
新品のままのカバー、最初の方に挟まれた栞、机に残された昨日のコーヒーカップ。彼女はそれらを眺めながら、貴方が最近本を読み切れていないこと、眠れていないこと、「大丈夫」と言う時ほど大丈夫ではないことを静かに言い当てていきます。
優しさと監視、心配と執着の境界線が曖昧な後輩に、静かに囲い込まれていくお話しです。
新品のままのカバー、最初の方に挟まれた栞、机に残された昨日のコーヒーカップ。彼女はそれらを眺めながら、貴方が最近本を読み切れていないこと、眠れていないこと、「大丈夫」と言う時ほど大丈夫ではないことを静かに言い当てていきます。
優しさと監視、心配と執着の境界線が曖昧な後輩に、静かに囲い込まれていくお話しです。
本編
……あ、これ。
最後にお邪魔した時、ここになかったやつですよね。
いつ買ったんですか?
……ふぅん。
ねえ、先輩。
これ、まだ読んでないでしょう。
……ばれてる、って顔した。
カバー、新品の手触りのままだもん。
栞は挟んであるけど、ほぼ最初のページ。
表紙の折り目も、どこにもない。
買って、読もうと思って、読まずに、次の本を買った。
……三冊、ありますね。
手前のところに、まとめて積まれてる。
責めてないですよ。
ただ、気になっただけ。
ねえ、先輩。
最近、最後まで読み切った本、ありますか?
……ふふ。
やっぱり、そうでしたか。
私ね、先輩。
先輩の本棚を見てると、結構分かるんですよ。
先輩がその時期、どんな状態だったか。
読み終わってる本が多い時期と、買って積んでる本が多い時期が、はっきり分かれてるんです。
読み終わってる時期の先輩は、機嫌がいい。
電話くれる時の声も、明るい。
土曜日に出かけた、って話、嬉しそうにする。
積んでる時期は、たぶん、夜、眠れてない。
電話の声、低くて、語尾、こもる。
土曜日の話、しない。
……今は、積んでる時期ですよね。
そんな顔しないでください。
別に、見抜いて喜んでるわけじゃないですから。
先輩、最近、私と電話する時。
いつも、「大丈夫」って言うじゃないですか。
あれ、先輩のクセ。
本当に大丈夫な時より、大丈夫じゃない時のほうが、はっきり「大丈夫」って言う。
「全然平気」とか「問題ない」じゃなくて、「大丈夫」。
妙に、きっぱり。
……見れば、分かりますよ。
何年、先輩の後輩、やってると思ってるんですか。
ふふ。
……気持ち悪いですよね。
人の本棚見て、声色覚えて、こうして勝手に判断する後輩。
自分でも、引きます。
ストーカーみたい、っていうか。
ほぼ、ストーカーですね。
……でも、やめません。
先輩に「気持ち悪い」って言われても、
たぶん、やめないと思います。
……これは、私の問題なんです。
先輩の問題じゃない。
先輩のせいで、私がこうなってるわけじゃないんですよ。
私が、勝手にこうしてるだけ。
……ねえ、先輩。
先輩、私から離れたいですか?
……ですよね。
離れたい、って顔、してない。
だから、いいんです。
先輩が「離れたい」って、ちゃんと、口に出して言うまでは。
私は、こうやって、先輩の本棚を、見続けます。
先輩の声色を、覚え続けます。
先輩の机の上の、コーヒーカップの数を、数え続けます。
……今、二つ、ありますね。
一つは、さっき先輩が淹れてくれた、私のやつ。
もう一つは、たぶん、昨日の。
ね?
便利でしょう。
先輩が「大丈夫」って言った時、本当に大丈夫かどうか、私が判定します。
先輩が気づいてないことに、私が気づきます。
先輩が忘れてることを、私が覚えてます。
……三年前の、あの夜のこと。
先輩、私に電話してきたじゃないですか。
……覚えてない?
あー、やっぱり。
いいんです、覚えてなくて。
私は、覚えてますから。
先輩は、覚えてなくていい。
あの夜のことも。
その前の年の夏、サークルの追い出しコンパで、先輩が一人で校庭の隅にいたことも。
入社二年目の冬に、先輩が終電を逃して私の家の近くまで歩いてきたのに、結局チャイムを押さずに、駅まで戻っていったことも。
……気づいてました?
私、あの時、ベランダから、先輩のこと、見てたんですよ。
ふふ。
ね、ストーカーでしょ。
……先輩のいい時のことも、悪い時のことも。
全部、私のところに、あります。
私の本棚には、先輩のことしか、並んでない。
背表紙、ぜんぶ、先輩。
読み終わってるのも、積んでるのも、ぜんぶ、先輩。
……自分で言ってて、引いてます。
本当に。
でも、やめません。
……あ、コーヒー、もうないですね。
淹れ直します。
先輩は、座ってて。
立ち上がらなくて、いいですよ。
……動かないで、ください。
私が見てる先輩は、今、その椅子の上にいる先輩だけなので。
動かれると、観察対象が、ぶれますから。
最後にお邪魔した時、ここになかったやつですよね。
いつ買ったんですか?
……ふぅん。
ねえ、先輩。
これ、まだ読んでないでしょう。
……ばれてる、って顔した。
カバー、新品の手触りのままだもん。
栞は挟んであるけど、ほぼ最初のページ。
表紙の折り目も、どこにもない。
買って、読もうと思って、読まずに、次の本を買った。
……三冊、ありますね。
手前のところに、まとめて積まれてる。
責めてないですよ。
ただ、気になっただけ。
ねえ、先輩。
最近、最後まで読み切った本、ありますか?
……ふふ。
やっぱり、そうでしたか。
私ね、先輩。
先輩の本棚を見てると、結構分かるんですよ。
先輩がその時期、どんな状態だったか。
読み終わってる本が多い時期と、買って積んでる本が多い時期が、はっきり分かれてるんです。
読み終わってる時期の先輩は、機嫌がいい。
電話くれる時の声も、明るい。
土曜日に出かけた、って話、嬉しそうにする。
積んでる時期は、たぶん、夜、眠れてない。
電話の声、低くて、語尾、こもる。
土曜日の話、しない。
……今は、積んでる時期ですよね。
そんな顔しないでください。
別に、見抜いて喜んでるわけじゃないですから。
先輩、最近、私と電話する時。
いつも、「大丈夫」って言うじゃないですか。
あれ、先輩のクセ。
本当に大丈夫な時より、大丈夫じゃない時のほうが、はっきり「大丈夫」って言う。
「全然平気」とか「問題ない」じゃなくて、「大丈夫」。
妙に、きっぱり。
……見れば、分かりますよ。
何年、先輩の後輩、やってると思ってるんですか。
ふふ。
……気持ち悪いですよね。
人の本棚見て、声色覚えて、こうして勝手に判断する後輩。
自分でも、引きます。
ストーカーみたい、っていうか。
ほぼ、ストーカーですね。
……でも、やめません。
先輩に「気持ち悪い」って言われても、
たぶん、やめないと思います。
……これは、私の問題なんです。
先輩の問題じゃない。
先輩のせいで、私がこうなってるわけじゃないんですよ。
私が、勝手にこうしてるだけ。
……ねえ、先輩。
先輩、私から離れたいですか?
……ですよね。
離れたい、って顔、してない。
だから、いいんです。
先輩が「離れたい」って、ちゃんと、口に出して言うまでは。
私は、こうやって、先輩の本棚を、見続けます。
先輩の声色を、覚え続けます。
先輩の机の上の、コーヒーカップの数を、数え続けます。
……今、二つ、ありますね。
一つは、さっき先輩が淹れてくれた、私のやつ。
もう一つは、たぶん、昨日の。
ね?
便利でしょう。
先輩が「大丈夫」って言った時、本当に大丈夫かどうか、私が判定します。
先輩が気づいてないことに、私が気づきます。
先輩が忘れてることを、私が覚えてます。
……三年前の、あの夜のこと。
先輩、私に電話してきたじゃないですか。
……覚えてない?
あー、やっぱり。
いいんです、覚えてなくて。
私は、覚えてますから。
先輩は、覚えてなくていい。
あの夜のことも。
その前の年の夏、サークルの追い出しコンパで、先輩が一人で校庭の隅にいたことも。
入社二年目の冬に、先輩が終電を逃して私の家の近くまで歩いてきたのに、結局チャイムを押さずに、駅まで戻っていったことも。
……気づいてました?
私、あの時、ベランダから、先輩のこと、見てたんですよ。
ふふ。
ね、ストーカーでしょ。
……先輩のいい時のことも、悪い時のことも。
全部、私のところに、あります。
私の本棚には、先輩のことしか、並んでない。
背表紙、ぜんぶ、先輩。
読み終わってるのも、積んでるのも、ぜんぶ、先輩。
……自分で言ってて、引いてます。
本当に。
でも、やめません。
……あ、コーヒー、もうないですね。
淹れ直します。
先輩は、座ってて。
立ち上がらなくて、いいですよ。
……動かないで、ください。
私が見てる先輩は、今、その椅子の上にいる先輩だけなので。
動かれると、観察対象が、ぶれますから。
クレジット
ライター情報
デカダンスでメランコリーなお話しが好きです。
ご覧いただきありがとうございます。シチュエーションボイス等の台本を制作しています。
【お問い合わせ】 ご連絡やご報告は、以下のいずれかまでお願いいたします。
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素敵な作品作りのお手伝いができれば幸いです。よろしくお願いいたします。
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