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人気のない浜辺で出会った、心惹かれる歌声の主は……
written by チョンマー
  • ファンタジー
  • 人外 / モンスター
  • 恋の芽生え
公開日2024年08月07日 01:28 更新日2024年08月07日 10:51
文字数
2178文字(約 7分16秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
女性(セイレーンの末裔)
視聴者役柄
男性
場所
海辺
あらすじ
海の見える、田舎町。
潮風を浴びながら車でそこを通りすぎようとしていると、歌声が聞こえた。

どこか悲しげで、心に響くようなそんな歌声に、車を停め思わず聞き惚れてしまう。

一体だれが歌っていたのだろう。
聞こえたのはほんの数秒だけど、聞こえてきた方向を頼りに、車を降りて海辺へと向かった。
本編
(波の音)

あら、こんな辺鄙なところに人なんて。珍しい。

どうしてこんなところへ?
近くに親戚の方がお住まいとか?
それとも、通りすがりでしょうか?


通りすがり。まぁ、そうですよね。
そうでもなきゃ、こんなところに人なんて来ないですもの。

観光地として人気というわけでもないですし、海水浴に行くなら、ここの近くにある海水浴場のほうがいいですし。
そもそも、道も整備されてないような場所です。ここまで来るの、大変だったでしょう?

あなたは、どうしてここに来たんですか?


歌声が聞こえた。
思わず聞き惚れるぐらいに素敵だったから、声の主を探しに来た……。


しまった……誰もいないことを確認したつもりだったのに……。

ごめんなさいね。それ、私です。
誰もいないと思って、つい……。

声を褒めてくださって、ありがとうございました。


もう一度、歌ってくれないか……。

それは、その……。
すみません、それは遠慮させてください。

あまり、人様に聞かせるような歌声でもないですし。
それに、誰かに聞いてもらうのは、その……恥ずかしいので。


そんなことない、とってもきれいな歌声で、心揺さぶられるような歌だった。

そう、ですか。

はい、ここまで来てくださったのですから、きっとそうなのだと、思います。

けれど、ごめんなさい。
恥ずかしい……というのは、確かにあるのですけど、それだけじゃないんです。


あなたは、私の歌を、間近で聞いてはいけないんです。


どうしてって、そう思いますよね。
理由、ちゃんと話します。信じられないことばかりだと思いますけど。最後まで、聞いてくれると嬉しいです。


セイレーンという、怪物をご存じでしょうか?
歌声で船乗りたちを惑わせて、溺れさせたという、そんな化け物。

私は、そのセイレーンの力があるみたいなんです。もしかしたら、セイレーンの末裔なのかもしれない。
何を言ってるんだって、笑いますか?

ありがとうございます。優しい人ですね。
話、続けますね。


セイレーンの力がある私の歌には、不思議な力があるんです。
人を惹きつけて、惑わせる。そんな力が。
特に、男の人には強くその効果が出るらしく、聞いた男の人を、その……虜にする。そんな効果が。

きっと、遠くで聞いてくれたのでしょう? だから、聞き惚れるぐらいですんだ。
いや、つい声の主まで探してしまうほどなのだから、かなり危ないところだったんだと思います。

あと一歩できっと、あなたは私の虜になっていた。あなたの本心とは無関係に、私に狂わされ、自我を失ってしまっていた。


ごめんなさい、あなたに迷惑をかけてしまって。わざわざこんなところまで来させてしまって。

ここなら人がいないだろうって、歌を歌わなかったらよかった。

今日のことは忘れてください。
もう、ここでも歌いません。

私はきっと、歌を歌うことは許されていないんです。


そんな綺麗な歌声なのに、もったいない?
いいえ、それは違います。

あなたには、そう聞こえるだけ。
不思議な力のせいで、心を乱されているから。それを、感動と誤解してしまっているだけです。

その思いは、全て偽物。怪物に植え付けられた、作り物の感情。
それとも、あなたは言えますか? 私の歌声の、どこが素晴らしかったのか。
言えるはずない。言えたとしても、それすらも作り物でしかない。
ですから、もう、いいんです。


あんなにも、悲しげに、訴えかけるように歌うのが、化け物の歌い方なのか……。


ええ、そうです!
私には、歌うことは許されない。
何気なく口ずさむことも、許されない。

悲しいに、決まってるじゃないですか!
こんな歌声なんて捨てて、自由に、気持ちのままに歌いたい!

けれど、ダメなんですよ! 
誰かを惑わすつもりがなくても、結局、あなたはこうしてきてしまった。


化け物でも、いえ、化け物だからこそ、あんな歌を……。


ごめんなさい。もう、何度も謝ってばかりですね。
もう一度、私の歌声を聞きたいという、あなたの願いを叶えてあげることはできません。
どうか、私のことは忘れて――。



例え、そうだとしても、僕は、あなたの歌声が好き?
距離を取れば、聞き惚れるぐらいですむなら、遠くから聞かせてほしい。


……あなたという人は、本当に。
きっと、それだけ、私に狂わされてしまった。そうに、違いないです。


分かりました。しっかり離れていてください。私の声がかすかに聞こえるぐらいの距離まで離れてないと、どうなるか、分かりませんからね。


そうですね……15分。15分経ったら、歌わせてもらいます。
それまでに、しっかり離れてください。



歌い終わったら、感想を伝えにまた戻ってくる?
ふふっ、分かりました。
それじゃ、また。



本当に、馬鹿な人。
これだけ、やめてって言ってるのに。

いや、馬鹿なのは私のほうか。
こうして、聞いてもらいたいって思うなんて。
あの人と、もっと語り合いたいって、思うなんて。

そういえば、誰かに聞いてもらうために歌うのって、久しぶりな気がする。
どうしよう、変に、緊張しちゃう。
おかしいな、私、セイレーンの力を持ってるのに、男の人を惑わすために、歌う怪物なのだから、男の人に聞かせるために歌うはずなのに。


もし、あの人が私の虜になってしまったら……責任、とるしかないですよね。
例え、植え付けてしまった感情だとしても、すべてが作り物だとは限らない。

それに、私からの感情には、作り物なんて混ざっていないから。


私のこの想い、作り物としてじゃなく、本物として、どうか。

届きますように。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
人気のない浜辺で出会った、心惹かれる歌声の主は……
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
チョンマー
ライター情報
pixivでフリー台本を書いています。
甘々な話も、ちょっとエモいお話も、どっちも好きで書いています。
元々小説畑の人間なので、どこか物語染みてるところがあるかも……。
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