あなたは人づきあいがどうにも苦手だ。
けれど、この世界は、人と関わっていくことがどうしても必要不可欠で。

人づきあいがうまくいかない自分は、この世界ではやっていけない。
きっと幸せになんてなれない。

そんなことを考えていると……。

……やっぱり、こんなところにいた。

捜したんだよ。
メッセージ送っても、電話しても反応ないんだもん。
いつものことだから、一人になりたくてここに来てるんだろうな、とは思っていたけれどさ、少しは心配するんだよ。

せめて、一人になりたいからぐらい、返事くれたっていいでしょ？


いいよ。次からそうしてくれたら。
それで。今回は、どうしてここに一人いたの？


そっか。人づきあいでうまくいかないことがあったんだね。
しかも、それが立て続けに起こったんだ。
それは……辛かったね。

うん、なに？


この世界にはたくさんの人がいるのに、人と上手くかかわることのできない自分は、きっと、これからもうまくやっていけない。
人づきあいがうまくできない自分なんかが、幸せになれるのかなって？
……そっか、そこまで思い詰めているんだね。


こういうとき、励ましの言葉をかけてあげたいとは思うんだけど。適当なことだったり、上辺の言葉だけかけたくもないからさ。
上手く伝えられるか分からないけれど、聞いてくれる？


まずね、幸せって人それぞれだと思うんだよ。
恋人ができて、最高のパートナーと共にいられることが幸せだっていう人がいれば、素敵な友人がたくさんいてくれて幸せっていう人がいる。
念願の夢をかなえることができて幸せだっていう人や、仕事にやりがいがあって幸せだっていう人もいる。
もちろん、一人でも、夢ややりがいがなくても、日々が充実してるから幸せだっていう人もいるわけで。
こうすれば、君はきっと幸せになれるよ、だなんて、安易に言えない。

それに、どうしてもこの世の中は、人と人とが関わりあって生きていく必要がどうしてもあって、それが上手くいかないと、この世界からのけ者にされてるって感じるのも、無理はないと思う。


でもね、これだけは言わせて。
君はすごいよ。とてもすごい。

だって、その負の感情を、周りに向けていないんだもの。
やっぱり、中には、自分の不幸を許せなくて、他人に不幸をばらまいてしまう人もいるからさ。
他の人に、不幸になってほしいとは思っていないんでしょ？
そこは、とてもすごいと思う。

私はね、自分がどうなったら幸せになるのかってイメージは、あんまり湧いていないんだけど。一つだけ、小さな幸せを感じることがあるの。

それはね、誰かを幸せにできたとき。誰かの幸せを一緒に喜んでいるとき、ちょっとした幸せを感じるんだ。
君も、そんな経験ない？


少し分かる気がする？
そっか、私だけじゃないって分かって嬉しい。

私は、まだ自分の隣に最高のパートナーがいる未来なんて想像つかないし、友達もそんな沢山いるわけでもない。大きな夢なんてないし、やりがいなんてものがあるわけでもない。
でもね、誰かのために生きていたい。誰かを幸せにするために生きていきたいって思ってるの。
こんなこと言うと、大層な物言いだけどさ、実際にできることって、ちょっと親切にしてあげたり、世のために働いたり。
そして、友達のために、こうして悩みを聞いてあげたりできるぐらいだけれど。
それでも、そうすることで、ちょっとだけ、誰かを幸せにできるし、私も幸せになれるからさ。


君が、もう人と関わるなんて絶対に嫌だ。っていうなら、これ以上は何も言えないけれど。
もう少しだけ、頑張ってみない？

君の優しさは、思いは、きっと誰かを幸せにできるよ。
私は、それが君の幸せにつながってほしいって願ってる。


うん。大丈夫だよ。
君は、幸せになってもいいんだよ。


よかった。やっと表情が変わってくれた。
ずっと沈んだ顔のままだったから、もう笑ったりできないんじゃないかって、不安だったんだから。

いいよ。今は無理に笑わなくても。
それは立派な感情の表れだから。正直に、押さえつけないで。

泣いちゃいなよ。
今日は思いっきり泣いてさ、明日から、幸せになるために、少しずつ頑張っていこう。
私も、君が幸せになれるよう力になるから。ねっ。

・台本（ゆるボイ！）
幸せになんてなれないという君に
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
チョンマー