0
月夜のメイドは恋を知らない
written by ねむりはり
  • 告白
  • 甘々
  • メイド
公開日2026年05月29日 01:12 更新日2026年05月29日 01:12
文字数
3323文字(約 11分5秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
メイド
視聴者役柄
ご主人様
場所
屋敷
あらすじ
「辞表を、ご覧ください――」
仕えて五年。旦那様のすべてを知り尽くしたメイドが、月夜にひとつの覚悟を持って訪れる。
コーヒーの豆の産地も、雨の日の肩こりも、疲れた夜に飲みたいものも――全部、愛していたから覚えていた。
プロとして完璧を貫いてきた彼女が、初めて「メイド」ではなく「ひとりの女性」として言葉を紡ぐ夜。
凛とした声が、少しずつ、確かに揺れていく。
本編
■ 導入パート(目安:3〜4分)

【SE】静かな夜。遠くで時計が鳴る音。コツコツと靴音が近づく。

(凛と、落ち着いた声で)

失礼いたします。

(少し間)

……夜分遅くにお声がけしてしまい、申し訳ございません。

【SE】扉を静かに開ける音

(丁寧に、しかし心なしかいつもより声が硬い)

本日のお仕事は終わりましたか?

ここ数日、遅くまで書斎の灯りがついておりましたので……
少し、心配しておりました。

(一拍置いて、いつも通りの落ち着いたトーンで)

私はこのお屋敷にお仕えして、もう五年になります。

気づけばずいぶん、長い時間が経ちましたね。

(穏やかに、少し遠くを見るように)

この五年で、私は多くのことを学びました。

お好きなコーヒーの豆の産地。
雨の日は肩がこりやすいこと。
疲れた夜には甘いものより、温かいスープの方が喜ばれること。

……全部、覚えています。

全部、大切にしてきました。

(ほんの少し、声が柔らかくなって)

今夜は……少し、よろしいでしょうか。

お話があるのです。

【SE】静かに椅子を引く音。座る気配。

(丁寧に、けれどいつもより真剣な声で)

お茶の時間でも、お仕事の話でもございません。

……私自身の、お話です。

(小さく深呼吸)

もしよろしければ、最後まで聞いていただけますか。

---

■ 本編パート①「辞表と本音のはざまで」(目安:8〜9分)

【SE】衣擦れの音。紙を取り出す音。

(静かに、しかしどこか緊張した声で)

……これを、ご覧ください。

(一拍)

辞表です。

(すぐに続けて)

驚かせてしまいましたね。申し訳ございません。

ただ……今夜このお話をするにあたって、
これが必要だと思いました。

(真っ直ぐに)

私は、メイドとしてここへ来ました。

お世話をすることが仕事です。
それは今も変わりません。

ですが……

(ここで少し声が揺れる)

……仕事として、だけではなくなってしまったのです。

いつの頃からか。
気づいた時には、もう……

(沈黙)

……順番にお話しします。

きちんと伝えたいので。

(少し遠くを見るように)

最初の日のこと、覚えていらっしゃいますか。

留学から帰っていらして、
空港から直接お戻りになった日。

とても、お疲れのお顔をされていました。

(小さく笑って)

それでも「ただいま」とおっしゃった時、
なんだか、とても嬉しそうで。

私は玄関でお出迎えしながら……
胸が、ぎゅっとなったんです。

(少し恥ずかしそうに)

こういう言い方は、メイドらしくありませんね。

でも、本当にそう感じたんです。

「ただいま」が、嬉しかった。

(静かに)

私はずっと、それを仕事への誇りだと思っていました。

お役に立てていることへの喜びだと。

(少し間)

……でも、違いました。

---

(真剣に、でも柔らかく)

二年前の冬、風邪で倒れられたことがありましたよね。

夜中に熱が上がって……
私、一睡もできませんでした。

お熱を測って。
タオルを替えて。
お薬の時間を確認して。

それだけなら、仕事です。

当然のことです。

でも……

(少し声が震える)

苦しそうなお顔を見るたび、
私まで苦しくなって。

(沈黙)

朝になって、お熱が下がって。

「ありがとう」

そう言ってくださった時……

(小さく)

……泣きそうになりました。

(慌てて)

もちろん、顔には出しませんでしたよ。

ちゃんと笑顔でお返事しました。

(静かに)

でも、そのあと少しだけ……
泣きました。

……お恥ずかしいですね。

---

■ 本編パート②「崩れていく完璧なメイド」(目安:9〜10分)

【SE】椅子を少し引く音。わずかに近づく気配。

(凛とした口調が、少しだけ柔らかくなって)

名前の由来を聞いてくださったこと、覚えていますか。

あれ、すごく嬉しかったんです。

(じんわりと)

困っている時は、必ず声をかけてくださいましたよね。

疲れている時は、早く休むようにって。

誕生日には……

(声が少し震えて)

お花まで、くださいました。

白い、小さな花。

ずっと部屋に飾っていました。

枯れてからもしばらく、捨てられなくて。

(静かに)

そういうことが、少しずつ積み重なっていったんです。

---

(少し間を置いて)

……私ね。

(ハッとして、小さく苦笑して)

失礼しました。

でも今夜は、少しだけ崩れさせてください。

メイドとしてではなく……

一人の女性として、話してもいいですか。

(一拍)

……ありがとうございます。

(肩の力が少し抜けた声で)

私、恋愛ってよくわからなかったんです。

感情的になるのも苦手で、
お仕事に誇りを持っていれば、それで十分だと思っていました。

でも今は、わかります。

(ゆっくりと)

朝が楽しみになること。

笑っている姿を見ると嬉しくなること。

悲しそうなお顔を見ると、自分まで苦しくなること。

もっと近くにいたいと思うこと。

(静かに)

……全部、恋なんですね。

(真っ直ぐに)

五年間、ずっと好きでした。

---

■ 本編パート③「告白、そして沈黙の先へ」(目安:8〜9分)

【SE】遠くで風が窓を揺らす音

(静かに、でも揺るがない声で)

だから……辞表を書きました。

この気持ちのまま、お仕えし続けることはできないと思ったんです。

ただのメイドとして振る舞い続けるのは……

(少し詰まりながら)

……嘘みたいで。

私は誠実でいたかった。

仕事にも。
自分の気持ちにも。

だから、正直にお伝えして……
離れるつもりでした。

(一拍)

でも今夜、お顔を見たら……

(困ったように笑って)

やっぱり、勇気を出したくなってしまいました。

---

(少し近づいて、柔らかく)

好きです。

(間)

……あなたのことが、好きです。

メイドとしてではなく。

一人の女性として。

(少し震えながら)

五年間、ずっと隣にいたんです。

嬉しいことも。
つらいことも。

近くで、全部見てきました。

だから誰よりも、好きだという自信があります。

(小さく息を吐いて)

……言えた。

ずっと言えなかったのに。

---

(少し照れながら笑って)

……今、すごく恥ずかしいです。

完璧なメイドを目指していたのに、
全部崩れてしまいました。

でも……

(柔らかく)

後悔はしていません。

本当のことを伝えられて、よかった。

---

(真摯に)

お返事は、どうか正直に教えてください。

迷惑になりたくないんです。

もし受け入れていただけないなら、
辞表は受け取ってください。

それでも……

ここで過ごした時間は、私の宝物でした。

(少し震えて)

でも、もし……

ほんの少しでも、
私を想ってくださっているなら……

(言葉が止まる)

……ごめんなさい。

ここまで来て、怖くなってしまいました。

---

(吐息交じりに、柔らかく)

……声が聞きたいです。

今、何を考えているのか。

(沈黙を待つ)

…………

(返答を聞いて、震える声で)

……え。

今、なんと……?

(かすかに泣きそうになりながら)

もう一度、聞いてもいいですか。

(間)

…………

(静かに、泣き笑いで)

……ありがとうございます。

ずっと、待っていました。

こんな日が来るなんて……
思っていなかったから。

(小さく鼻をすすって)

……今夜だけは、泣くのを許してください。

---
■ クロージング「月明かりの誓い」(目安:4〜5分)

【SE】遠くで虫の声。静かな夜。

(笑いを含んだ、温かい声で)

……不思議ですね。

さっきまであんなに緊張していたのに、
今はとても穏やかです。

(少し甘く)

隣って……
こんなに温かかったんですね。

五年間、近くにいたのに。

---

(宝物を扱うように)

辞表は……返してください。

もう、必要ありませんから。

これからも隣にいたいんです。

仕事としてだけじゃなく。

(少し照れながら)

まだ敬語は抜けそうにありませんけど。

ゆっくり直していきます。

気長に待ってくださると、嬉しいです。

---

(少し声を落として、甘く)

……好きです。

まだ照れますけれど。

でもこれからは、ちゃんと言葉にします。

何度でも。

あなたが嬉しそうにしてくださるなら。

---

【SE】遠くで時計が一時を告げる音

(ハッとして)

あ……もうこんな時間。

明日もお仕事がありますよね。

(少し名残惜しそうに)

今夜はもう、お休みになってください。

お部屋まで、お送りします。

(小さく笑って)

それだけは、まだメイドとして。

---

【SE】静かな廊下を歩く足音

(歩きながら、穏やかに)

月明かり、綺麗ですね。

いつもは一人で歩いていたから……

こうして並んで歩くの、なんだか不思議です。

(嬉しそうに)

……これから、こういう時間が増えるんですね。

---

(最後、柔らかく)

今夜、話を聞いてくださって……
本当にありがとうございました。

おやすみなさい。

(間)

……夢に出てきたら、どうしましょう。

(小さく笑って)

……それは、秘密です。

【SE】静かな夜の音。虫の声。ゆっくりフェードアウト。

(END)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
月夜のメイドは恋を知らない
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
ねむりはり
ライター情報
はじめまして
趣味でただ私が聞きたいフリー台本を書き投稿しているオタクです。
「こういう台本が欲しかった」
「よかった」
と思ってもらえる作品を書けるように頑張っています。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

◇フリー台本に関して
詳細な言葉遣いや言い回し、台本内のセリフの順番など、読みやすいように改変していただいて構いません。
性別変更及び、大元の流れが変わらない範囲でのアドリブ等も可能です。
使用時は作者名+作品リンクのクレジット表記をお願いします。
使用報告いただけると聴きに行きます。
よろしくお願いいたします。
ご不明な点がありましたら、お気軽にご連絡、ご相談ください。
有償販売利用の条件
当サイトの利用規約に準ずる
有償利用について
全ての台本に関しまして、有償利用が可能です
利用実績(最大10件)
ねむりはり の投稿台本(最大10件)